「ビッグアーチの屋根掛け用の積立金がマツダスタジアムの土地代に流用された」という都市伝説

ブログ「とある事務屋の備忘録」さんのところでも以前語られていたが(リンク切れ URL: http://blogs.yahoo.co.jp/hiroshige1717/44453288.html)、「ビッグアーチの屋根掛け用の積立金がマツダスタジアムの土地代に流用された」という事実は無いだろうと推定される。

以下、ソースを出しつつ説明。

マツダスタジアムの土地取得というのは二段階に分けられて行われた。一回目が1998年に行われた「広島土地開発公社による国鉄清算事業団からのヤード跡地取得」で、二回目がマツダスタジアム建設に先立って行われた(2006年2月)「広島市による土地開発公社からのヤード跡地取得」(中国新聞Webアーカイブより)。

で、一回目の土地取得は「とある事務屋の備忘録」さんが書かれているように、土地開発公社による土地購入って原則金融機関からの借入れによる取得。「例外的に市が直接金を出している可能性は?」という疑問もあるかもしれないが、「平成15年度広島市包括外部監査結果報告書 出資団体に係る出納その他の事務の執行状況」という文書(1.4MBもあるpdfなので注意)を読む限り、全額金融機関からの取得と見て間違いなさそうだ。

報告書の73ページ(pdf上では77ページ)には土地取得費が約110億円であること、平成14年度の利息が約2.7億円であることが記載されている。また、74ページには平成14年度までの主要借入金利が2.3パーセントだった(主要でない借入金利があることに注意)ことが記載されている。で、110億の2.3パーセントは約2.5億、主要でない金融機関からの借入金利が2.3パーセント以上だとすると大体つじつまが合う。

てことで一回目の土地取得にはビッグアーチの屋根掛け費用が流用されていることは無いだろう、と考えられる。

次、二回目の土地取得。「とある事務屋の備忘録」さんのところにも記載されているが、この費用は約55億円で、そのうち51億を市債(カープ等によるスタジアム利用料から返済)するというもの(広島市による運営計画(Webアーカイブ)参照)。従って、二回目の土地取得についても、おそらくビッグアーチの屋根代はつぎ込まれてはいないだろう、と推定される。

そもそも標記のネタが出てきたのは、中国新聞による平岡前々市長へのインタビュー記事[archive]がきっかけのようだ。この記事をソースとして標記のネタが2010年にWikipediaに掲載され、ネット上で広まった、というのが原因らしい。しかしインタビュー記事の対応する記載は「明かせば設計図はあったし、経費は約140億円と踏んでいた。だがW杯は最初は日本単独を狙ったのが共催となり、広島が選定されても開催は3試合。費用対効果に見合わないので架設をやめた。それだけの金を使うなら、海田町との合併を進めるため東部地区への投資に充てようと考えた」であり、屋根掛けの為の積立金があったとも、そのような積立金がヤード跡地の取得に使われたとの記載もない。

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