旧広島市民球場跡地について(2)

旧広島市民球場は三塁側スタンドも含めて大部分解体された模様。ということで、ちょっと仕切り直しをしてみる。

前にも書いたが、私の基本的なスタンスは、イベント広場賛成、んで、なんとか予算の都合をつけてサッカー競技場を併設、というものである。旧市民球場跡地は市にとっては紙屋町再開発計画の一環であり、この地に求められるのは「集客できた人が周辺で消費活動を行なってくれることが期待される設備」である。で、イベント広場というのはこの目的に合致し、かつイニシャルコスト・ランニングコストともに(他の施設に比べれば)低く抑えられる設備である。「イベント広場を作るべき」という市の判断は正しい、と思う。

なお、市は「イベント広場を作る」ということをかなり早い段階で決めていたと思われる。跡地コンペで二案が選ばれたというのも、一部市議が言っているような談合紛いという分けではなく、単に「広場」があるのが当選二案だけだったということだろう。秋葉前市長は「ディスインフォメーション」を積極的に使うタイプである。具体的には、「どうでもいいもの(例:折鶴ホール)」や「むしろ積極的に葬り去りたいもの(例:オリンピック、西飛行場市営化)」をあえてプッシュし、対立陣営に批判させるという手を好んで使う。ネット上でも秋葉氏への批判はたくさんあるが、実のところ、その批判は秋葉氏が望む状態であり、批判者の多くは期せずして秋葉氏の望む通りの行動を取ってしまっているように思われる。それゆえに、秋葉市政を分析するには、この「ディスインフォメーション」部分を除去して「本当に行政が実現させたいと思っている部分」を抽出する必要がある。跡地に関して言うならば、「折鶴ホール」はもとより、やたらとプッシュしていた「NYセントラルパークのような緑地公園」もダミー。商工会議所移転も、ふがじん氏のブログによれば市は当初別の私有地を移転先として提案していたとのことなのでダミーっぽい。というか、当該ブログで示されていた市の資料も商工会議所移転反対運動を焚き付けるために市がわざとリークしたんじゃ無いかと思ったり。

イベント広場に対する批判として、「集客イベントは準備も大変でコストもかかるから、年に何回も行なえるものではない。むしろプロサッカーという確実な興業のあるサッカー場の方がよい」というものがある。この批判、「イベントを大規模イベントに限定しすぎ」では無いかと思う。例えば代々木公園イベント広場のイベントスケジュールを見ると、イベントとしてはフリーマーケットが主体である。市も「規模は小さくとも気軽に(低予算で)イベントを開催可能であり、それゆえにイベントがより多くの日数開催される」ことを重視しているのではないだろうか。むろん、多数のイベントを誘致するためには利用料を安く抑える必要がある(そんなこと、行政は当然分かってると思うけどね)。ちなみに代々木公園の場合50円/(m2・日)で、イベント広場(1ha)全部を一日借りても50万円。その気になればサラリーマンでもイベント開催出来そうだ。跡地の場合、国有地地代(51円/(m2・日))がネックとなるが、第110回国有財産中国地方審議会議事録(12ページ)によれば、中央公園44ha中国有地は39haなので、うまく土地交換を行なえば、1haくらい非国有地として確保できるような気もする。

さて、以上のように市はイベント広場を重視しており、それゆえに「イベント広場を作らない、あるいは建物の奥につくる」というアイディアは、到底市が飲めるものでは無いと思う。市民、あるいは議員から跡地案についてどのような提案をするにせよ、「イベント広場を南東に確保する」ことを盛り込まなければ、あれこれ理由をつけて却下されるのがオチだろう。逆に、イベント広場さえ確保できれば、それ以外の部分については(イニシャルコストさえ目処がつけば)柔軟に対応してくれるのではないだろうか。前にも書いたが、サッカー場をイベント広場に併設することは、

  • プロサッカー開催日は自動的にイベント広場のスケジュールが埋まる(試合前のステージイベントとか)

  • スタジアムの設備を利用することによりイベント広場の使い勝手の向上(フード系のイベント時にスタジアムのトイレを開放するとか、コスプレイベントとかでスタジアムの更衣室を使うとか)

  • イベント広場がグリーンアリーナと隣接する(スタジアムができるなら市民球場のスタンドを残す必要なんて無いよね)ので、グリーンアリーナのイベントをイベント広場と連動させることも可能

といった効果が期待され、イベント広場にとっても有用である。そして、市民球場跡地だけではなく、隣接する公園部分の土地(勝鯉の森、ハノーバー庭園、青少年センター)をフル活用すれば、イベント広場+スタジアムは十分実用可能だと思うんだ。

ということで、本当に旧市民球場跡地にサッカースタジアムを作りたいのであれば、やるべきことは

  • 行政サイドにとってacceptableな(つまり、イベント広場と共存でき、かつ市の出費を抑えられる)スタジアムの提案

  • イニシャルコストの負担先(つまりサンフレッチェ広島とかネーミングライツを負担する企業とか)を引っ張り出して行政との交渉のテーブルにつかせること

であると思う。例えば、100億で25000人級のスタジアムを作ろうとするならば、集客効果何かを考慮して市は30億くらいは負担してくれそうな気がする。で、残り70億を使用料やネーミングライツで埋めるなら年3.5億。クラブやらネーミングライツのスポンサーがこの数字に同意できる(つまり年3.5億+維持費をクラブとネーミングライツスポンサーで負担する)ならば、市も反対しないと思うんだ。

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