行政ポジから見た跡地サカスタ運動

あ、私は市の職員でも関係者でもそれらの知り合いでも無い一介の行政ヲチャであり、下記の意見は「自分が(まちづくりを真面目に考えている)行政の人間ならこう思う」というものでしかないです、念のため。

1.「市民が跡地サカスタを望んでるかどうか」はあまり重要じゃない

こういっちゃなんだが、「市民が跡地専スタを望んでいる」ことは跡地にサッカースタジアムを作るための積極的な動機にはなりえない。すごく身も蓋もないが、「民意反映」は行政が優先的に考慮すべき事項じゃない。優先されるべきは「それが担当行政区分(市とか県とか)にとって、出資するに足る価値があるのか」ということ。もっと身も蓋もなくいっちゃうと「それにお金を出すことによってどんだけの収入(税収増による間接的な収入を含む)が見込めるの(or 収入減をどんだけ防ぐことができるの)?」である。

ぶっちゃけ、住民の望むものをつくったら住民が幸せになれるのか?という問題もあるわけで。前も書いたけど、「住民の要望に則って作った結果、使い勝手の悪い金食い虫ができました」ってのは結構ありがちなまちづくりの失敗パターン。さらにいっちゃうと、まちづくりって長いスパンで考えなきゃいけないんで、「未来の住民のメリット」を「今の住民のメリット」と同じくらい、あるいはより重く考慮しなきゃいけない。

もちろん効率重視・民意二の次のスタンスでやりすぎちゃうと特定の住民層に大ダメージが来る可能性もあるわけで、そこは考えなきゃいけない。だけど、そこを民意に則って何とかするのは(住民代表の合議体たる)議会の仕事だろう、と。

要するにまちづくりにおける行政の仕事って「住民が望むものを作る」じゃなくて「住民に反発されない範囲内で最良のものを作る」ってことだと思うんだ。

ただ、跡地スタジアムの必要性を市民に訴えることは無駄じゃないよ。目的は「行政を動かすため」じゃなくて「行政が乗り気になった後に議会でひっくり返されないため」なんだけどね。

2.まず具体的で「考慮に値する」レベルの提案が欲しい

申し訳ないんだけど、サンフレッチェのスタジアム提案って行政視点からだと「論外」レベル。「プロサッカーの興業があること」自体に武道場と青少年センターを立ち退かせるだけの価値があるとは思えない。サンフレッチェの経営が厳しくて好立地にスタジアムが欲しいのは理解できるけどそのためにここまでのものが必要とも思えない。プロサッカー優先でデザインされているのでそれ以外のスポーツ興業には使いづらそう。

てか、この問題を追っかけて今の広島の施設の利用状況や他の都市の状況を調べれば調べるほど「跡地はイベント広場と文化・芸術に」つー市の基本方針は正しい、と思えてくる。市が出している具体案が正解とは思わないけどね(これまでの市のやりからから推察するにあれはダミーだろうし)。少なくともホールは無くても構わない(1000人オーバーのホールは3つあるし、アマチュアにとって使い勝手の良い1000人未満の小規模ホールは青少年センターにある)。イベントスペースも7000~10000平方メートルくらいが適切で大きすぎても扱いに困る。

市の基本方針を十分満たした上でさらにスタジアム、てのが行政が欲しい提案だと思うんだ。ここで重要なのは、「プロサッカー以外を軽視しない」ということ。「いいサッカースタジアムを考えて、余った(えてしてアクセス性や使い勝手の悪い)スペースにサッカー以外の為の設備を押し込む」のではなく「使い勝手の良いイベント・文化芸術施設をまず考えて余った場所にサッカースタジアムを押し込む」くらいの感覚で提案しないと失敗すると思う。

あと、費用負担をどうするのか?ってのも大事。行政に取って費用対効果が見込めないのであれば、差額をどっかから調達する必要がある。このへんの提案もちゃんとしとかないと。パッと思いつくのは

  • ネーミングライツを数十年分一括前払い

  • 横浜スタジアム方式。数十年分の年間指定席の権利と引きかえに一口100万くらいで寄付を募る

  • 増税またはそれに類するもの。広島市の世帯数は54万弱なので一世帯あたり年1000円を負担してもらえば年5.4億。市債発行でスタジアムを建てるだけの原資としては十分

  • NFLパッカーズ方式。相続以外の譲渡不可、議決時の委任不可の株式を発行してスタジアム建設資金を確保する

3.観光とかも割とどうでもいい

サッカースタジアムができると他都市から来たアウェサポがお金を落としてくれて…という意見もあるけど、そもそもプロサッカーの興業日が20数日だしアウェサポって試合あたり1~2000人くらいじゃない?広島市の観光客数って年900万くらいだから、比率としては少ない。観光として使えるから、ていうのはスタジアムを建てるべき積極的な理由にはなり得ない。あくまでも地元の人間をどんだけ引っ張ってこれるのか?ってのが重要でよそから来る人はあくまでも付け足しレベル。

観光振興って(よその地域からお金を引っ張ってくるので誰も損しないから)すごく耳障りのいい言葉なんだけど、リゾート地や奈良京都みたいに観光が主産業となっているところでも無い限り積極的にやっても無駄遣いにしかならない。リピーターになってくれるお客さんって、どっちかというと近場(いわゆる二松二山)の人達で彼らが広島に期待している観光資源って都市生活そのものじゃないかと思うんだ。だから観光振興って都市機能を整備すればそれに付随するはずで、あえて観光にリソースを割くのは無駄じゃないかと。


まぁ、ここまで書いといて何だけど、私ごときが書いたようなことはクラブは当然理解していて、公表していないだけでそのための行動をちゃんと取っているはずだよね。住民の支持を頼みにした力押しが通じない、てのは秋葉時代に散々見ているでしょうし。だから具体案を早く見せてくださいおねがいします。

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